2012年6月アーカイブ

クフーラン・サイクル」ついて

河原その子

「クフーラン・サイクル」は、アイルランドの詩人・劇作家である、ウイリアム、バトラー・イェーツによる、ケルト伝説の英雄、クフーランの生涯を題材とした、5本の短編戯曲をひとつの舞台作品としてまとめて上演する試みです。2002年, ジョナサン・ラーソン賞受賞の作曲家ジヘイ・リーと組みニューヨークでこの一挙上演を行って以来、この作品群の持つ可能性を信じ、再びいつか手掛けたいと常に思っているものです。

日本では一作目の「鷹の泉」が良く知られています。20世紀初頭に西洋の詩人が能に触発されて創作したという事実が、日本人に興味をもたれた理由のひとつでもあるでしょう。また、「不死を求める」というテーマも普遍的で、アイルランドの英雄伝説の枠を離れても、理解されやすい劇です。しかし「鷹」で登場する若いクフーランの、その後の軌跡と死を描いた4作は、遠い異国の伝説へのなじみの薄さと、イェーツの作家としての愛国魂や神秘主義への傾倒もあいまって、注目度もひくく、劇としては埋もれていました。私も「鷹」を読むまでこの4作のことは知りませんでした。

5作を通して読み、なぜ、この作品がこれまで上演されなかったのかと思うほど、劇的な驚きに満ちた作品だと感じました。また、作者自身も連続で上演される形を意図していなかったため、劇形式もばらばらで、それぞれ一幕物として上演されてる劇として書かれています。しかし、「鷹」から始まり、「クフーランの死」で終わる5幕物で完結するという視点で物語を見直すと、人間世界に存在する、目に見える物(人間の、エゴ、嫉妬、希望や、絶望、感情)と、見えない物(人間のコントロールをこえた精神)で構成される2重世界が、最後でつながり、個々の劇だけでは見えなかった大きな輪が出現し、この瞬間、一気に遠い異国の英雄の物語が、今この時間に生きている私たちの生とリンクすると感じたのです。これを表現したい、舞台でしか表現できない何かがあるに違いないという強い思いから、5作一挙上演に意味を見出しています。

イェーツは、能の形式を借り、彼の求める舞台で現実と超自然の実現、劇のもつマジックを能の形式を借りることで可能になるとし、俳優達もマスクをするように指示しています。

けれど、私は逆にそれが、この作品が現代の舞台作品として世に広まることを阻害しているように感じるのです。様式に先にとらわてはいけない。マスクをつけることで、様式の面をかぶり、俳優が「不思議」な存在になるというコンセプトは、能の素人がつけやきばで、できることではないと、能を身近に知る日本人の私には思われたのです。日本的な借り物、能楽からの借り物を剥ぎ取って、様式や、また逆に実験的アプローチというやみくもさも取り払い、余計なもの排除してから、イェーツのテキストに臨んでみたほうが、まわりが透明になって、中身の本質に近づける。そういうアプローチを今回のワークショップでも続けて追及してゆきたいと思っています。

劇は先ず「心の目に呼び起こす」という行為から始まります。何も無いところから、どう言葉を立ちあげ、立体化して、時間の中を動かしてゆけるかをを、丁寧にワークショップ参加者と、見つけてゆく作業をしてゆければと思います。音楽は一緒に物語を進行する需要な要素であるので、ピアノ一台でよいので、ジヘイ作曲した曲と、「鷹」と「エマー」で歌われる楽師の歌はワークショップで残せることを希望しています。

瞬間瞬間をとらえ、自分の周りで起こることに鋭敏に対応できる身体の感覚を養い、ひとつひとつの動きや発する音に責任を持ち、アンサンブルが際立ち、個人が際立つ、カンパニーとしてのまとまりとバランス感覚を養うエクササイズも参加者達とやって行ければと思います。イェーツのテキストは普段使う言葉ではありません。それを現実感を失わずに、大きく広げてゆくテクニックも、エクササイズに取り入れてゆければと思います。

具体的には、私が師事したアン・ボガートのビュー・ポイントトレーニングは、いろいろな形で発展し解釈されますが、私にとっては俳優が自分の潜在能力を無意識で発見することができる有効な手段で、それを応用したエクササイズ、またコンポジションという短時間でストーリを抽出するエクササイズも、創造の瞬発力養う、楽しく有効なので是非取り入れてみたいと思います。

常田景子さんの新しい日本語訳は重要な役目を果たすと思っています。言葉は有機的に変化します。新しい感覚の言葉が、この埋もれていた作品群に新しい命を吹き込み、舞台作りの共同作業ができることは幸運です。

このワークショップでは1,3,4作目を扱うことにります。短期間でどこまで行けるかわかりませんが、将来的に、サイクル劇5作まとめて一本の舞台作品としての上演を実現し「鷹の泉」の遠い先に待っている、「不死の水」を逃した若いクフーランと、泉の守り手の運命の結末を、現代の私達に問いかけることができればと思っています。

tptは1993年スタートからこれまで活動の重要な核として、

いろいろなアプローチで新しい舞台表現を探求するワークショップを

継続して実施しています。


20thシーズンも3月から

●ロルカ『ベルナルダ・アルバの家』プロダクション・ワークショプ

●『Wastwater』『A Numbar』『アメリカン・バッファロー』

翻訳者とテキストを読む・聴くワークショップ。

●『デカローグ』プロダクション・ワークショップ

●サイモン・スティーブンズ作『WastWater』手塚とおる演出

 プロダクション・ワ−クショップ

と、様々に実施してきました。

 

夏! ワークショップをさらに前に進めます。

翻訳家常田景子さんの新訳による3作品

7月7日〜7月29日 『Cuchulain Cycle /5』

8月20日〜9月9日 『A Number

9月10日〜9月30日『Dancing at Lughnasa

ワークショップ ▶ リハーサル ▶ ワーク イン プログレス発表

それぞれ3つのプロダクションが、3週間かけて挑戦します。

『地獄のオルフェ』12月上演に向けたワークショップ&オーディションの参加者を募集します。


*プロダクション・ワークショップ&オーディション

6月27日(水)〜7月6日(金)

 募集クラス:Apm〜5pm(20名) Bpm〜9pm(20名)

 内容:エキササイズ、シーンスタディ

         オーディション(最終日)

 参加費:40,000円  場所:tptアトリエ

*公演

2012.12月公演予定

テネシー・ウィリアムズ作

『地獄のオルフェ』

広田敦郎訳 岡本健一演出

東京芸術劇場シアターウエスト(小ホール2)


『地獄のオルフェ』

誰にとっても、青春の感情の記録ほど大切なものはない。

地獄のオルフェはさらけ出された私の心の軌跡である。 —テネシー・ウィリアムズ―

1957年ブロードウェイ初演のこの作品は作者の脚本によりマーロン・ブランド、

アンナ・マニャーニ主演で映画化(邦題「蛇皮の服を着た男」)されている。

偏見、差別、迷信、暴力に満ちたアメリカ南部の町。流れ着いた自由な魂をもつ若い男ヴァルに、

地獄のような現実から救い出してくれる“オルフェ”を見出すレイディの物語。

登場人物は男10人、女10人。

40名以上の劇作家、翻訳家、演出家、俳優による tpt2000年夏のディレクターズ

&デザイナーズ・ワークショップで、岡本健一さんは演出家として参加。

 

●参加申込:歌、ダンス、楽器演奏(ギター、ピアノ、パーカッションなど)、得意な技能を

必ず申込用紙(tptホームページよりダウンロード)に、ご記入の上、郵送、Fax、メールにてtpt宛お申込み下さい。

 

TPT シアタープロジェクト・東京  http://www.tpt.co.jp/ 

江東区新大橋11211近泉ビル3F  03-3635-6355  (Fax) 3634-1352